黒色哀愁

学校案内には載っていないICUをお見せします。

まるで大本営発表?留年・中退に関するICU当局の姿勢

ICUという大学の諸相を知るために重要な情報は、公式サイトで開示されているにもかかわらずあまり注目されていない。

本学では、教育機関として高校生やその保証人、そして社会に対する説明責任を果たすとともに、透明性の高い運営を目的に、積極的な情報公表に努めています。

大学概況|国際基督教大学(ICU)

 大学概況によって知ることができる情報から、本記事では留年・中退・休学に関するものを取り上げる。

 

留年者について

留年者については、 「学生に関する情報」カテゴリから「社会人学生数、留年者数」を参照することができる。なぜ社会人学生数と同じページにまとめられているのかは分からない。そして、出てくる情報は以下のようなものだ。

 

ICU には、大学が定めた年次ごとの科目履修計画はありません(語学教育科目を除く)。入学から卒業までの間に、要件を考慮しながら、卒業に必要な 136 単位を満たすように、学生ひとりが主体的に科目を選択していきます。したがって「留年」はありません。

なお、本科学生の修業年限は休学期間を除く 4 年です。8 年を超えて在学することはできません。

社会人学生数、留年者数|国際基督教大学(ICU)

なるほど、学生が主体的に履修計画を組むから、留年は制度上無いらしい。なんと素晴らしい学校でしょう!・・・しかしこの記述には問題がある。「留年」という言葉を定義することなく「留年」はありませんと言っている点だ。

まず、ICUにおいて留年が無いと言えるのは、留年を「年次ごとの進級判定が行われ、原級留置と判定されること」と定義した場合だ。確かにICUには原級留置という措置は無く、4年以内に卒業要件を満たさなければ登録学期が増えていくだけである。ただし、これでも「大学が定めた年次ごとの科目履修計画はありません(語学教育科目を除く)」というのは不正確な記述だ。語学教育科目は初年度~二年次に履修することが求められているが、たとえ語学教育科目の予定された年次ごとの単位取得に失敗したとしても進級扱いになるからだ。

3年次でも4年次でも、語学教育科目の履修を終えて4年次の終わりまでに全ての卒業要件を満たしていれば卒業することが可能であることからも明らかである(無論、困難ではあるが…)

そして、留年を「卒業するために修業年限4年を超えて在学する必要が生じること」と定義するならば、留年は確実に存在している。私費留学、休学、単位不足、モラトリアム延長等さまざまな理由で4年を超えてICUに在学している学生は多い。4年生(シニア)で卒業せず5年目に突入することをゴニアと呼ぶ俗語があるくらいである。

そして、この項目を参照する人が本当に知りたいのは後者の意味での留年をしている人の数だろう。この記述の仕方は、「教育機関として高校生やその保証人、そして社会に対する説明責任を果た」しているだろうか?

参考までに、2012年に入学した本科生(ID16)は602人(4月・9月入学生合算)であり、4年後2016年3月に卒業したID16の学生は400人だ。9月入学生が50人程度と考えて引いたとしても実に150人、約27%の学生が4年で卒業していない。

 

一番の問題は退学者・休学者数の項目

次に退学者・休学者数の項目を見てみよう。

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http://www.icu.ac.jp/about/docs/1505_withdrawal_J.pdf

この資料では、年度ごとの在籍者に対する退学、除籍、休学の件数が示されているほか、特定年度入学者の4年間での退学件数や初年度での退学件数を示している。

まず母集団を特定年度の”在籍者”にした退学率と特定年度の”入学者”にした退学率を同じ資料で用いている点が怪しく思われるが、この母集団の不可解な操作によって抜け落ちている情報を考えてみれば、さらに不信感が増すことになるだろう。

特定年度の"入学者"が最終的に卒業しない割合はどれほどなのか?

例えば、ここにAさんという人がいたとする。AさんはICUに入学し、3年目に健康上の理由で休学をしたと。ここで1年と1学期の休学の後に、ICUを卒業することを断念して退学したとする。この時、Aさんの在学期間は客観的に見るならば、4年と1学期である。しかし、大学の示す資料においては、Aさんは「4年間の退学率」にも「初年度の退学率」にも計上されない。

中退者の中には、休学や単位不足が理由で5年以上在籍した後に卒業せずに中退していく人も多いのではないか。だとするならば、在籍者を母体にした退学件数の率や、4年間での退学率といった数字にさして意味は無いように思われる。退学率を参照する人が知りたいのは特定年度の入学者が最終的に卒業できる割合であり、この数字を発表することは難しくないはずである。

ちなみに、休学者が100人を超えているが 、これは特定年度に休学を開始した者の数なのか、特定年度の時点で休学中の者の数なのか、また留学中の者を含んでいるのかも明らかにされていない。

 

以上に見てきたように、公表された情報を参照したとしても「透明性の高い運営を目的に、積極的な情報公表」(透明性の高い運営を目的に積極的な情報公表をしているとは言っていない)状態なことがわかる。いかに大学当局が学生の留年や中退をタブー視し、公にしないために苦心しているかが窺える。そのタブー視する姿勢が、留年や中退の当事者の苦しみや葛藤を増幅させる圧力となってはいないだろうか?