黒色哀愁

学校案内には載っていないICUをお見せします。

ICUの単位互換制度はエレクティブ(選択科目)の取得単位を増やす裏ワザである。

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ICUには単位互換制度が存在するのはご存知だろうか。

 

www.icu.ac.jp

 

公式HPによると、多摩アカデミックコンソーシアム(TAC)をはじめ、様々な形での協定があり、大学間の交流を盛んに進めようとしていることがわかる。
協定校間における取り組みの一つが単位互換制度である。国際基督教大学の学生が協定大学(東京経済大学津田塾大学東京外国語大学国立音楽大学など)の所定の科目を履修することで、ICUの履修単位に認定されるというものである。

 

もちろんここまでは、どこの大学もやっていることだ。
しかし、ICUで単位互換をすることは、思わぬメリットを生じさせる。
それは、ICUは日本で数少ない三学期制の学校である一方、単位互換制度を利用できる協定校の多くは2学期制であることによる。ICUの1学期が6月末に終わる一方、協定校の多くでは前期(春学期、1学期など呼称は色々)が、7月~8月に終わるので、試験期間のズレを利用して、単位取得を飛躍的に進めることができるのである。

 

しかし、他校の科目を履修するほど、負担は増加して単位取得の障害となるのではないか?
試しに、協定校の単位互換科目のシラバスを見てみよう。

成績評価欄に「試験100%」「レポート100%」あるいは、それに近い科目がいくつかあるだろう。単位乞食であれば、そこを狙っていこう。
一回も出席せずとも、持ち込みOKの科目で試験に出ただけで単位が来る、レポート出しただけで単位が来る、といった「楽勝」「楽単」科目がいくつかあるかもしれない。

 

そこで単位を取り、所定の手続きを行えば、ICUの履修単位に編入される。


ただし、1回も出席もせずに試験だけを受けるような学生は試験にて100点取ろうが80点取ろうが不合格にするという教官もいる。そもそも、文部科学省は大学の単位認定において、全講義の2/3への出席と試験を受けることを要求している。
そのため、出席が不十分な学生を不合格にするのは当然と言える。
こういったリスクがあることは理解されたい。

想定される質問

1.楽単で単位を取ったとしても、成績が悪ければGPAに悪影響が出るのではないか?

残念ながら他大学で編入された単位には成績がつかない。AだろうがCだろうが、ICUに単位編入を行った際には「合格」という事実だけが残る。当然、GPAにも反映されない。

2.万が一他大学の単位を落としたら、GPAが下がってしまうのではないか?

これも杞憂だ。他大学の単位互換制度を利用して履修した科目に関しては、不合格になった場合単位の編入がされないだけで、履修登録自体がなかったことになる。
つまり、他大学の科目はノーリスクで履修登録をすることができる。

そもそも、GPAを気にする読者にはあまりこの記事の情報が必要であるとは考え難いが…

 

単位互換制度を利用するデメリット

もちろんこの単位互換制度にもデメリットがある。

まず一つは履修登録が面倒くさいことだ。シラバスはとっ散らかったPDF形式の書類だけだし、履修登録をするために在籍校と協定校を往復しなけばならない。協定校には在籍校で発行された書類のほか、学生証を発行するための写真や身分証明書が必要な場合もある。

もう一つは、前述の通り時間割と学期のシステムがICUと協定校とで大きく異なるため、そもそも講義に出席するための時間割を組みにくいことだ。
(ちなみにICU側の履修登録とコンフリクトする科目を協定校で履修登録したとしても、ICU側のシステムと連動していないため、履修登録は認められる。この事実をどう使うかは読者に一任する。)

そして、他大学との単位互換によって取得した単位は、エレクティブにしかならない。また、編入可能単位数上限も存在する。自らの単位取得状況を正確に把握した上での活用をおすすめする。

 

なお、本情報は2016年3月までの情報であり、最新の情報は学内ポータルなどから仕入れた上で活用されたい。詳細は、教務からのお知らせコーナーに掲載されているはずである。
毎年履修できる科目も変化しており、あまりチンケな単位乞食が頻発すれば、「楽単」科目が単位互換の対象から外される可能性も考えられる。良心的な活用を心がけて欲しい。

【ご注意】本記事の情報を利用したことで生じた損害に関して、当ブログおよびその筆者は一切の責任を負いません。

 

ELAリフレ特集(1)どうやったらリフレが起きるのか?

ICUにはリフレという言葉がある。この大学では、建前上単位を落とすと人権がない。(実際にはポロポロ落とす人は一定数存在している)ましてや1年次必修科目であるELAの単位取得に失敗すると、まるで人が死んだかのように語られるのが常である。

この特集では(1)どうやったらリフレが起きるのか(2)リフレをするとどうなるのか(3)卒業にどの程度影響するのか の3点を紹介する。

 

<注意>当該記事の情報は2016年3月現在のものであり、今後制度が変更される可能性は大いにあります。ご自身の履修計画を立てるにあたっては、必ず大学の発行物、HPを参照したり教務課やELAオフィスに問い合わせることによって各自ご確認ください。当記事をの情報をアテに行動して発生した損害につきましては黒色哀愁では一切の責任を負いかねます。

 

(1)どうやったらリフレが起きるのか

リフレが起きる仕組みを知るためには、まずELAの履修制度について知る必要がある。ELAは、全ての4月入学生に必修科目として定められている科目である。ここでは筆者の属したStream3(必修22単位)について書く。

Stream3では1年次春秋冬学期の3学期でARW9単位、RCA6単位、AS4単位、2年次任意の学期でのRW3単位の履修が求められている。リフレは、このうち1年次の必修科目である各学期のARW、RCA、ASのいずれかまたは全てが不合格となり、かつ次年度の再履修が必要と判断されることを言う。なお通常の科目とは異なり、成績判定は各学期・各科目ごとに行われるが、単位認定はそれぞれの科目の全学期の成績が揃った時に行われることに注意したい。また、各学期の各科目成績はA+~D-の12段階とU(不合格)になることも重要である。

ここまでで既に複雑であるが次に示す事実もまた複雑極まりない。まず再履修(リフレ)が発生する場合と発生しない場合の例をご覧いただこう

 

・ARWの春秋冬の成績が D-,E,D-だった場合→不合格(秋学期ARWを再履修)

・ARWの春秋冬の成績がD,E,D-だった場合→合格(最終成績D)

 

あれ?1学期落としてるのに合格するの?と思ったことだろう。

これは、単位認定後の最終成績が3学期の成績の平均を取って出されることが原因である。

数値化すると前者の成績は1,0,1(平均約0.67)であり、後者の成績は2,0,1(平均1)である。平均が1を下回ると、最終評価Dを付けることができないため、再履修が必要となる。

 

まとめ→各学期につけられる成績E,D-~A+を0~12の数字に換算して、3学期の合計が3に満たなかった時に、当該科目のEが付いた学期が再履修となり、リフレが発生する。

つまり、1学期ELAを落とした程度ではリフレすることはない。

 

その他の特殊なケースに関する噂話を下記に記すが、これらに関しては筆者のもとで検証されたものとされていないものがあるので、判明していることを列記するのみにとどめておく。

 

・3学期のうち2学期にEが付くと、合格した1学期の成績がC-以上でも再履修となる→未確認

・最終学期の冬学期にEが付くと、強制的に再履修になる→ならない

・再履修に該当すると、4年間で卒業できない→できる。リフレは原級留置ではないため。

・LLAに出席しないと単位が落ちる→落ちない。LLAの出席はARW,RCAの成績の一部とみなされるため、LLA単体で単位が認定されることはない。

 ・出席していれば単位を落とすことはない→あり得る

まるで大本営発表?留年・中退に関するICU当局の姿勢

ICUという大学の諸相を知るために重要な情報は、公式サイトで開示されているにもかかわらずあまり注目されていない。

本学では、教育機関として高校生やその保証人、そして社会に対する説明責任を果たすとともに、透明性の高い運営を目的に、積極的な情報公表に努めています。

大学概況|国際基督教大学(ICU)

 大学概況によって知ることができる情報から、本記事では留年・中退・休学に関するものを取り上げる。

 

留年者について

留年者については、 「学生に関する情報」カテゴリから「社会人学生数、留年者数」を参照することができる。なぜ社会人学生数と同じページにまとめられているのかは分からない。そして、出てくる情報は以下のようなものだ。

 

ICU には、大学が定めた年次ごとの科目履修計画はありません(語学教育科目を除く)。入学から卒業までの間に、要件を考慮しながら、卒業に必要な 136 単位を満たすように、学生ひとりが主体的に科目を選択していきます。したがって「留年」はありません。

なお、本科学生の修業年限は休学期間を除く 4 年です。8 年を超えて在学することはできません。

社会人学生数、留年者数|国際基督教大学(ICU)

なるほど、学生が主体的に履修計画を組むから、留年は制度上無いらしい。なんと素晴らしい学校でしょう!・・・しかしこの記述には問題がある。「留年」という言葉を定義することなく「留年」はありませんと言っている点だ。

まず、ICUにおいて留年が無いと言えるのは、留年を「年次ごとの進級判定が行われ、原級留置と判定されること」と定義した場合だ。確かにICUには原級留置という措置は無く、4年以内に卒業要件を満たさなければ登録学期が増えていくだけである。ただし、これでも「大学が定めた年次ごとの科目履修計画はありません(語学教育科目を除く)」というのは不正確な記述だ。語学教育科目は初年度~二年次に履修することが求められているが、たとえ語学教育科目の予定された年次ごとの単位取得に失敗したとしても進級扱いになるからだ。

3年次でも4年次でも、語学教育科目の履修を終えて4年次の終わりまでに全ての卒業要件を満たしていれば卒業することが可能であることからも明らかである(無論、困難ではあるが…)

そして、留年を「卒業するために修業年限4年を超えて在学する必要が生じること」と定義するならば、留年は確実に存在している。私費留学、休学、単位不足、モラトリアム延長等さまざまな理由で4年を超えてICUに在学している学生は多い。4年生(シニア)で卒業せず5年目に突入することをゴニアと呼ぶ俗語があるくらいである。

そして、この項目を参照する人が本当に知りたいのは後者の意味での留年をしている人の数だろう。この記述の仕方は、「教育機関として高校生やその保証人、そして社会に対する説明責任を果た」しているだろうか?

参考までに、2012年に入学した本科生(ID16)は602人(4月・9月入学生合算)であり、4年後2016年3月に卒業したID16の学生は400人だ。9月入学生が50人程度と考えて引いたとしても実に150人、約27%の学生が4年で卒業していない。

 

一番の問題は退学者・休学者数の項目

次に退学者・休学者数の項目を見てみよう。

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http://www.icu.ac.jp/about/docs/1505_withdrawal_J.pdf

この資料では、年度ごとの在籍者に対する退学、除籍、休学の件数が示されているほか、特定年度入学者の4年間での退学件数や初年度での退学件数を示している。

まず母集団を特定年度の”在籍者”にした退学率と特定年度の”入学者”にした退学率を同じ資料で用いている点が怪しく思われるが、この母集団の不可解な操作によって抜け落ちている情報を考えてみれば、さらに不信感が増すことになるだろう。

特定年度の"入学者"が最終的に卒業しない割合はどれほどなのか?

例えば、ここにAさんという人がいたとする。AさんはICUに入学し、3年目に健康上の理由で休学をしたと。ここで1年と1学期の休学の後に、ICUを卒業することを断念して退学したとする。この時、Aさんの在学期間は客観的に見るならば、4年と1学期である。しかし、大学の示す資料においては、Aさんは「4年間の退学率」にも「初年度の退学率」にも計上されない。

中退者の中には、休学や単位不足が理由で5年以上在籍した後に卒業せずに中退していく人も多いのではないか。だとするならば、在籍者を母体にした退学件数の率や、4年間での退学率といった数字にさして意味は無いように思われる。退学率を参照する人が知りたいのは特定年度の入学者が最終的に卒業できる割合であり、この数字を発表することは難しくないはずである。

ちなみに、休学者が100人を超えているが 、これは特定年度に休学を開始した者の数なのか、特定年度の時点で休学中の者の数なのか、また留学中の者を含んでいるのかも明らかにされていない。

 

以上に見てきたように、公表された情報を参照したとしても「透明性の高い運営を目的に、積極的な情報公表」(透明性の高い運営を目的に積極的な情報公表をしているとは言っていない)状態なことがわかる。いかに大学当局が学生の留年や中退をタブー視し、公にしないために苦心しているかが窺える。そのタブー視する姿勢が、留年や中退の当事者の苦しみや葛藤を増幅させる圧力となってはいないだろうか?

 

はじめに

黒色哀愁は国際基督教大学ICU)に関して、あまりスポットライトが当たらない(当てられない)物事を扱うことで、読者のICUでのキャンパスライフの役に立つ情報を提供したり、好奇心を満たすことを目的とするブログである。

ICUのイメージと言えば美しいキャンパスで国際色豊かな教員や学生が賑やかにキャンパスライフを送り、アメリカ式リベラルアーツ・カレッジを背景にした少人数教育で学生満足度が高く、日々学習と議論に勤しんでいる。近年はスーパーグローバル大学に指定され、洗練された英語教育を実施することでも知られており、世界で活躍する人材を多数輩出している…といったところだろう。

もちろん、こういったイメージはある側面では正しい。大学当局や同窓会、各種学生団体による情報発信を通じてICUの輝かしい学生の姿を捉えることは難しくない。そして、こういったイメージが流布することによって、各々がイメージに適合しようという働きが生じてイメージに適合した群像が再生産されていることも事実だ。

こうして輝かしい側面を追いかけていられて、そのようにあることが出来る時はまだ良い。しかし、そうではなく必ずしも明るくない、というか暗い側面に対峙した時はどうすれば良いだろうか。実際に、適応することが出来ずに何度も必修科目を繰り返す者がいれば、休学や中退、他大学再受験や編入を選ぶ者もいる。そして、時には命を落としてしまう者も存在する。

以下の文章は、昔存在していたという学内新聞の「学生の自殺」に関する記事である。

自殺を考えたことがある、もしくは自殺を図ったことがある学生の中には、いわゆる“ローグレ”(Law Grade)による退学勧告を受けた者も少なくない。もともと鬱傾向にあるため成績不良になるひともいれば、成績不良で鬱状態になるひともいる。西尾先生は毎学期三十人前後の除籍対象者との面談をするというが、面談中に涙を流し、胸のうちを明かすひともいる。その中で、線路に飛び込んだ、樹海に行ったことがある…などの話も聞くという。

国際基督教大学新聞 - ICUPress - Web News and ARCHIVES: ICUで、自殺を考える より引用

自殺という結末に至る者は記事にある通り多くはないが、自殺を含めた暗い話題は、多くのICU学生のキャンパスライフと地続きなのにもかかわらず、あまり語られてくることがなかった。黒色哀愁では筆者の見聞や公表された事実などから、必ずしも明るくはないブラックなICUの側面を紹介する予定である。